夏が好きだ。生がなにより煌めいている感じがするから。
朝は蝉が鳴き、昼は蜃気楼に向こうが揺らめいて、夕暮れには蝉の死体に蟻が群がる。夜も更けた時間になると犬の散歩をする人たちの挨拶が外から聞こえてくる。そんな季節を何よりも愛している。
いつから夏が好きだったかと言われると意外と中学生の頃かもしれない。実家のベランダで外を眺めながら12本で780円のアイスを食べたあの日、初めて季節というものを認識して好きになったような気がする。
それまでの私にとって季節というのは何ら気にすることのない存在だった。夏祭りに家族や友人たちと行ったことがあるのに、である。余談だが夏祭りに行くと金魚すくいしかさせてもらえない実家だった、屋台の衛生観念について知って母親に感謝したのはつい最近のことだ。
南中高度を大きく上げた太陽の白い光の下、全ての彩度が上がったような気さえしてくるのが毎年新鮮にヤッホー!と言いたくなる。空の青さこそ秋に負けるものの開放感は恐らくどの季節にも負けないと思えてくる。
日が長いのも好きなところだ。5時に起きても朝は暑くないし、外が明るいからレースのカーテンだけで勉強もできる。窓を開けていたら気温が上がるのと比例して蝉の声も大きくなり、そのうち街が動く音が聞こえてくる。
これは幼い頃の夏休みの記憶ゆえなのだろうか、夏休みがなくなってもあの頃の朝9時に自転車で集まり日が落ちるまで遊んでいた万能感・無敵感に似た気持ちを夏になると取り戻せるのだ。